第1項 シェア住居とは何か

※本項は2010年の改訂に合わせ、記述内容が変更されています。

コミュニケーションを付加価値とする住居

シェア住居とは、キッチン、リビング、浴室、トイレ等の設備を複数名の入居者が共同で使用する住居の事を指します。

従来の風呂無しアパートのように経済性のみを訴求点としたものではなく、共用設備の利用に際し発生する入居者同士のコミュニケーションを主要な訴求点としているのが特徴です。

運営方法による2つの類型

シェア住居は、その運営方法や枠組みに応じて大きく2種類に類型化する事が可能です。

DIY型運営

まず1つは、生活の当事者である入居者同士でベースとなる物件を借り上げるなどし、その賃料を相互に負担し合うスタイルが標準的な「DIY(DoItYourself)型運営」のシェア住居です。

従来「ルームシェア」「シェアハウス」として広く認知されているのは、DIY型運営によるシェア住居のイメージが一般的です。このDIY型運営のスタイルには、順調に稼働した場合は1人辺りの賃料負担が大きく軽減される事や、自分たちで全てを作り上げてゆく醍醐味といったメリットがあります。

その反面、生活ルール作りや細かなトラブル対応、そしてベース物件の用意に関わる諸費用や稼働率変動時の経済リスクまで、原則として全て生活者自身が負担します。一般に生活者にとっては、ハイリスク・ハイリターンの特徴を持ったシェア生活の選択肢と言えるでしょう。

事業体介在型運営

もう1つは「事業体介在型」運営のシェア住居です。一般的な集合住宅の小さなトラブルや日々の管理については、管理会社が介在する事で物件運営やトラブル対応の負担やリスクを一定量吸収する役割を果たしています。

これと同様に事業体介在型運営のシェア住居においても、シェア生活において何かと困難であったり、生活者自身の負担やリスクが大きくなりがちな部分を、事業体が介在する事で一定量吸収します。

その結果、生活者(入居者)自身は生活面でも経済面でも過度なリスクを負う事無く、従来の集合住宅を選択するのと比較的近い感覚でシェア生活のライフスタイルが選択できるのが特徴です。その反面、事業体が介在する事で賃料相場は一般の単身者向け賃貸物件と変わらない場合が比較的多くなっています。

コミュニケーションを付加価値とする住居

このように、近年の事業体介在型運営のシェア住居の急速な拡大は従来の風呂無しアパートのように経済性のみを訴求点としたものではなく、共用設備の利用に際し発生する入居者同士のコミュニケーションを主要な訴求点としているのが特徴です。

本書で取り扱うのは、この「事業体介在型運営」のシェア住居となります。表記の簡略化のため、本書内において「シェア住居」と表記した場合は「事業体介在型運営」のシェア住居を示す事とします。