●ゲストハウス歴史探訪:BBHouse 編

インタビュー
インタビュー風景

@ 今回はいわゆるガイジンハウスの時代からゲストハウスの運営をされているBB HOUSEの三代川さんに、昔のゲストハウス事情に関してお話をお伺いできればと思います。それでは、簡単に自己紹介をお願いします。

BB HOUSEの三代川道雄です。2001年にBB HOUSE小川を立上げ、運営を続けてきました。BB HOUSE小川の立上げ以前は1988年に別件でハワイに行きまして、縁があってバナナバンガローというアメリカの会社でユースホステルの日本向け広報部長として働いていました。

バナナバンガローは全米に6ヶ所ありまして、全世界から旅行者やバックパッカーが集まってきていました。最初は日本人が少なかったのですが、1999年にはガイドブック地球の歩き方にも紹介され、爆発的に人気が出ました。結果、お客様の6割が日本人となり楽しい時間を不自由無く過ごしましたが、2001年1月に契約が満了となり、日本に帰国しました。

インタビューの様子

@ 日本でゲストハウスを始めたきっかけは何ですか?

ゲストハウスを始めたきっかけは、帰国後、TVで外国人向けゲストハウスが紹介されているのを見たことです。こんな所があるのか、これは自分がやっていた事と同じだと思い、すぐに会社を設立して小川でゲストハウスを始めました。

実は日本の事情や状況が良くわかっていなかった事もあり、ハワイで自分がやっていた事をそのまま実行しました。ただし、日本では入居期間は1ヶ月以上という事で宿泊型ではありませんでしたが。当時は日本での滞在先を探す外国人の為に始めたため、ウェブサイトも英語で作成しました。

@ 物件は元々どんな使われ方をしていたのですか?

物件は元々オーナーがセルフビルドした築45年のアパートでした。引き継ぐ方を探していたようで、初めて行ったときは結構荒れていましたね(笑)。18部屋あったのですが、入居者は3人。オーナーに「このアパートを満室にしたいんです」と交渉をし、契約を決めました。ハワイ以外に海外に行った事は無かったですし、ゲストハウスも知らなかったんですけどね(笑)。

@ すると、BB HOUSEはハワイでやってらっしゃったスタイルを踏襲する形を考えていたのですか?

はい。基本的には個室はありながら何かをみんなで共有するスタイルで、と考えていました。普通のアパートとは違って、共同の場所があると皆と仲良くなれるんですよ。ハワイでも感じた事ですが、日本人はゲストハウスのような生活を経験していないので楽しんでくれていましたね。

@ なるほど。海外でのシェア生活事情はどうなのでしょうか?

息子がオーストラリアに行っているんですが、現地ではホステルに滞在するようです。世界中にありますし、楽しいし、安いし若い方には人気があるようですよ。

インタビューの様子

@ 日本でゲストハウス事業を始めるに当たり、国内のマーケティングは行いましたか?

外国人向けで始めたので、ターゲットが違うと考えて手探りでスタートしました。最初の頃は入居者の100%が外国人で、日本人は徐々に増えてきました。ワーキングホリデーなどで海外に出て行く人が増え、ホームステイやゲストハウスを海外で経験し良さがわかった上で必然的に国内でもゲストハウスを求めるようになっていったように思います。

@ 創業当時、集客はどのように行っていたのですか?

インターネットと成田と羽田に置いてあるフリーペーパーの広告ですが、結果的にインターネットの方が集客が出来ましたね。

@ 最初の日本人入居者はどのような方でしたか?

初めの日本人は近所の美大生でした。昔は男性女性問わず、若い人が宣伝していないのに英語のサイトを見て申し込んでくる方が多かったですね。みんな英語が話せました。男女比は以前は男性が6割程でしたが、最近は逆転して女性の方が多いようです。女性の方が海外に行くことが多くなってきたのではないかと思っています。

@ 当時の入居期間と賃料設定はどのくらいでしたか?

初めは短期の方を対象にしていましたが、運営してみると長期の方が多かったですね。短期と言っても1ヶ月未満ですとホテル業になってしまいますから、最低で1ヶ月からですが。賃料を安めに設定して、楽しくやって貰おうと思っていました。

@ 現在、外国人と日本人の比率はどの位ですか?

現在は8割が日本人です。入居中の外国人はイギリス、アイルランド、アメリカ人ですね。男女比は半々ですが、日本人対象にシフトとしてきていると考えています。僕は誰が来てもウェルカムですけど、結局は需要と供給ですから、今は外国人よりも日本人に求められているのかなと思います。

@ 実際の所、日本人と相性のいい国等ってあるのでしょうか?

うーん、やっぱり先進国はいいですよね。イギリス、カナダ、オーストラリア、アメリカ、この辺の国は男女とも紳士的で礼節を知っている、女性に対して尊敬したりとか、ハラスメントをしないとか、常識を持っている方が多いです。

アジア圏で言うと印象が良いのは韓国です。儒教を信仰しているためか、お年寄りを大事にしたりとか、日本の若者に無い礼儀を持っていると感じました。男性はゲストハウスに入っきても兵役があるので帰国しなければいけないという事もありました。

あ、それと日本の女性は外国人にモテますけど、日本の男性はモテないです(笑)。英語が話せないし、やさしさで欧米人に敵わないですからでしょうね。

インタビューの様子

@ 入居者との交流で楽しかった出来事などを挙げて頂けますか?

パーティーで色んな国の人が色んな国の料理を作ってくれます。中国人は祖国から油や食材を持ってきて作ってくれました。インドの方は香辛料を調合してカレーを作ってくれました。間違ってもバーモントカレーなんかは出てきませんよ(笑)。

@ ハワイでのご経験から、日本のゲストハウスに持ち込みたいと思ったものはありますか?

そうですね、向こうは料理が付いてくるんです。夜は毎日スタッフが作り、週末はパーティーでした。食事は有料で共同のキッチンでスタッフが作りみんなに安く提供していました。そういうのは実現できたら面白いかもしれないですね。

@ なるほど。それでは、三代川さんから見た最近のゲストハウス事情についてお伺いできますか?

女性は英語が堪能なことが多いですね。真面目だし海外への憧れもある。入居者は英語を話したいと言う欲求があるみたいです。英会話教室に通うよりも、ゲストハウスで生活する事でタダで英語を覚える事も出来ますし、実際そういう方も居ます。最近ゲストハウスは増えているようですが、利用する人の選択権が増えるので良いと思います。

また、政策で外国人を増やす方針らしいですが、彼らには滞在する場所が無いですからゲストハウスはもしかしたら救世主になるかもしれない。僕は外国人の方をサポートしようと思って始めたのですが、日本人の入居希望者が増えたからと言って、それを無視する事はできないです。数が増えてみんなが入れるような形になれば良いと思っています。

@ 三代川さん自身は、これから何をされる予定ですか?

メキシコのラパスに行く予定です。ラパスはスペイン語で平和という意味なのですが、そこで探し続けていた理想の楽園のような場所を見つけてしまったんですよ。電気も水道もガスも無いところですが、僕が整備します!みんなに知って貰いたいんですよ。空は真っ青だし、魚は入り乱れて、ビーチは真っ白ですし。

僕はそこで日本人をターゲットとした宿泊施設を作りたいんです。馬を買って乗馬をしたり、僕だけが満喫してもいいんだけれども、みんなに知ってもらって僕に同調してくれる方がいたら、土地を切り売りしたり。何かを共有できるようなゲストの為のハウスを作りたいんです。僕は本来のゲストハウスの形はコレだと考えていますから。

@ 楽しみですね。現在BB HOUSE小川の運営を引き継いでいらっしゃるエジソン合同会社さんもご紹介をお願いできますでしょうか?

浦山氏: 今後も管理の質が落ちていかないように気を付けて物件数を増やして行きたいです。トラブルは思った以上に少ないですし、頭を抱えるようなものはないです。ゲストハウスは手間が掛かる割にどの運営事業者も管理物件のエリアが散らばってしまっているので、カード交換みたいに物件交換を気軽にできるようになればいいのにな、と思います。管理コストも下がりますしね。

インタビューの様子

@ 最後に入居者さんに向けてメッセージをどうぞ。

ゲストハウスでは普段、普通に生活していたら絶対会えない色々な人に会えます。入居者さんに聞いてみても、色々な人に会えて嬉しかったと言ってくれます。そういった魅力は大きいものだと思います。

私たちの運営するゲストハウスはとても古いんですが、建て替えるのにはお金がいるけれども、楽しさを提供するのにはお金はいらないですから、そういった場を提供していきたいと考えています。デザイン性の高いゲストハウスとは違う方向性ですが、人間の面白さで今後も運営していきたいなと思います。

@ 本日はどうも有難うございました。